社会保障審議会医療保険部会のあん摩マッサージ指圧、はり・きゅう療養費検討専門委員会(事務局は厚生労働省保険局医療課)は料金改定に至るまで既に7回を数えました。まあ、ロクな議論もされていないことから、私も傍聴していて施術者代表の4名に対して「おまえら何やってんだか?」という思いでいっぱいです。彼らは療養費という保険の仕組みを理解しない者なのに業界代表として国から委嘱を受けているのです。料金改定に当たっては、第6回の検討専門委員会(平成28年7月7日開催)まで何らの料金改定の議論がなされませんでした。ここまではどちらかというと保険者が、あはきの療養費をいかに抑制できるかの方策を次から次へと提示してきたのでした。ところが第7回(平成28年8月30日開催)になって、急に0.28%のプラス改定ということで具体的な料金改定の提示がはじめてありました。相も変わらず、10円上げるとか30円上げるとかの体たらくの話であって、プラス改定にもかかわらず「往療距離加算」に至っては30円のマイナスですよ。こんな愚かな料金改定で納得しているこの業界が不思議でなりません。国にはこの私、上田たかゆきを検討専門委員に委嘱してほしいです。
 さて、改定の裏側のお話ですが、私が検討専門委員のメンバーではないことから、裏側の正確なお話ができる立場にはありません。しかし、過去からの経験等に基づきあくまで「推測・憶測」のレベルで良ければお伝えしましょう。
 私の想像による改定の裏側は、恐らくはこういうことであったのではないかと思います。最も重要なのは、あはき療養費にも受領委任の取扱いを導入して、一部負担金だけで医科や柔整療養費と同じように保険が使えることを望んだことです。これは、自民党の有力筋の国会議員より「俺の顔を立てて、あはきの療養費を受領委任払いにしてやってくれよ!」という強い意向なり働きかけが事務局にあったのでしょう。これを立場上無視できない事務局は、議論の整理の案として「受領委任制度の導入については平成28年度中に結論を得ることとする(つまり導入する方向で本年度内に決めますということ)」と記載して専門委員会に諮りました。それまで、「柔道整復の受領委任払いは問題が多くダメだ!」と保険者から厳しい疑義が出されていたものを、完全に無視してあえて書面にしたのは、事務局側の戦略でしょう。保険者から「今までの検討は何だったのか。受領委任は柔整で失敗しているので否定的な議論をしているのに、それをあはきにも適用するなど何をバカなことを言っているのだ。絶対に認められないぞ」とか「なぜ委員会の議論が何らも反映されないのか。おかしいのではないか」と強く反発したのです。保険者がいうような議論がなされていたにもかかわらず事務局は完全無視したのだから、保険者は厳しい言い方で事務局を責めていたのです。
 ただ、私が思うには、この保険者の厳しい追及も実はシナリオの筋書き通りであって、検討専門委員会という「平場」の席で書面をもってあはき療養費の受領委任取扱いの導入を持ち出し、保険者から厳しい追及があって、これを受けて「座長預かり」で修正が入り、結局は「引き続き検討を要す」との落としどころでしょう。
ちなみに「引き続き検討を要す」とは、今後も絶対に認められないということなのです。その結果、国会議員は業界の意向通り働きかけたことを証明でき、一方、事務局としては議論の結果、社保審の座長の調整で文面を修正し、受領委任導入を回避でき、保険者は見事に受領委任導入を回避すべくその配役をこなして演じたというところでしょうか。
 第7回検討専門委員会の議事録を見ていただければお分かりのとおり、このシナリオ作りには事務局と保険者側委員との綿密な打ち合わせがあったことでしょう。一方、施術者側委員は、単に自民党の有力国会議員にお願いをしただけで、事務局との打合せや交渉がなかったこととお見受けしております。だからこそ健保組合の役員はあそこまで徹底的に追及できたのではないでしょうか。それも施術者側に問い質すのではなく、あくまで行政である事務局に対して厳しい口調で申し述べていたのです。保険者側委員と事務局との間で綿密な事前打ち合わせが行われていたことを物語る箇所は随所にありましたが、決定的な点は、保険者が、あはき療養費の取扱いとして受領委任払いを導入するのであればとの疑義討議で、それは平成15年当時にあった千葉地裁や東京高裁の裁判での国の論拠との整合性を問われた場面で顕著でした。事務局の担当室長は、当時の裁判の判決文を読み上げていましたが、なぜ事前に10年以上も前の判決文が手元にあらかじめ用意されていたのでしょうか。それは、事前に保険者から責められる内容を伝えられていたからに他なりません。むしろ、事務局が保険者に「このように役所側を攻めてください!」とお願いしたのかも知れません。
 事務局は国会議員の顔を立て、かつ保険者側にも協力させ、結果としては施術者も受け入れざるを得ない座長一任との落としどころ。結果としては、「継続検討事項」と整理して放置するための「出来レース」に過ぎなかったというのが裏話でしょう。
 このことを施術者の意見を反映させる立場で委員の委嘱メンバーである4名の業界人は理解しているのでしょうかね。
 施術者が気付かない改定の裏側には、例えばこのようなことがあったものとお見受けしております。柔整の方ではおバカな業界人が会場から退場命令を座長より受け、退席した場面もあり滑稽でしたが、あはきは盛り上がりに欠け、結果としてはいつもの通り10円とか30円とか上がったとか30円下がったとか低レベルの改定内容でありましたが、あはき療養費の受領委任払い導入など、あはき業界に国会議員が1名もなく、今後も国会議員が皆無なのだから実現する運びには決してならないのです。
 最後に座長が「こうしたものは双方満足のいく結論は絶対に出ない。不満足の最小化をできるだけ図ることが、中医協でも行われてきた」と締めくくったのですが、座長が文書内容を調整して歩くわけではなく、結局は事務局が調整することになるのです。すべては厚労省の掌の上で文面修正することができることとなりました。結果としては、国会議員の顔を立て、保険者の意向をも尊重し、あはき療養費の受領委任払いの導入を回避してホッタラカシに出来たという離れ技の芸当を行ったのであります。

 貧乏くじを引いたのは施術者側の4名の委員たちです。情けなくて言葉もありませんね。

以上、改定の裏側のお話でした。