2016.4理事長コラム「マッサージ課程が認められないことはマッサージ業界の衰退に直結する」

 あん摩・マッサージ・指圧師の国家試験を受験するには、養成学校で受験資格を得なければなりません。しかし、視力障害者を保護する観点から、マッサージ師の身分法である「あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師等に関する法律」の第19条に明記されている「当分の間、文部科学大臣又は厚生労働大臣は、あん摩マッサージ指圧師の総数のうちに視覚障害者以外の者が占める割合、あん摩マッサージ指圧師に係る学校又は養成施設において教育し、又は養成している生徒の総数のうちに視覚障害者以外の者が占める割合その他の事情を勘案して、視覚障害者であるあん摩マッサージ指圧師の生計の維持が著しく困難とならないようにするため必要があると認めるときは、あん摩マッサージ指圧師に係る学校又は養成施設で視覚障害者以外の者を教育し、又は養成するものについての第二条第一項の認定又はその生徒の定員の増加についての同条第三項の承認をしないことができる。2 文部科学大臣又は厚生労働大臣は、前項の規定により認定又は承認をしない処分をしようとするときは、あらかじめ、医道審議会の意見を聴かなければならない。」の規定があるため、未だに養成施設の新規課程の新設が認められていません。このあはき法19条の規定をクリアーして、是非ともマッサージ課程を新たに設立しなければ、マッサージ業界の明日はないでしょう。現状ではマッサージの学校があまりにも少なく、マッサージ師になりたくても入学できない者が数多くいるのです。
 マッサージ業務の需要は膨大な数に上りその大半を無資格者が「無資格施術」として供給しています。法令的にはこれは由々しき問題であるにもかかわらず、国も業界も具体的な無資格者施術の取締りに参加できない状況が続いています。
 昨年の9月8日に医道審議会が開催され、全国各地の大学・専門学校からのマッサージ課程の新設を認めるかどうかの審議が行われました。結果としては、6か所程度の申請件数の全校分を一括して「不承認とする」と、この業界のリーダー諸氏が決めました。修業年限も地域性も異なるのに、なぜ一括してすべからく不承認にするのでしょうか。それは「はじめに不承認ありき」だからです。
 マッサージ課程の新設を法令上に沿った形で認めない論拠はただ一つ。それは「視覚障碍者に及ぼす著しい困窮の虞が未だに何らも解決されずに継続しているから」ということですが、今回の医道審議会での議論はこのことに何らの検証もされずに一方的に決まったのです。
 業界団体が挙ってマッサージ課程の新設を認めないのであれば、無資格者問題や医業類似行為問題は今後も何も解決されないでしょう。マッサージの既存校のみが既得権を保障され、名目上「視力障碍者の保護の見地」から、今後も医道審議会での議論は変わることがありません。業界自体がことの重大さに気付かないふりをして、相も変わらず感情論のみで「マッサージ学校が増えると視力障碍者は絶滅するぞ!」と声高に叫んでいるような業界であれば、今後も何も変わらないでしょう。マッサージ業界の衰退に直結するのです。

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